発達障がい者専門キャリアカウンセラーからのこぼれ話 Vol.27 「発達障害のグレーゾーン」

発達障害のグレーゾーン」という言葉に、世間の注目が集まっています。

 

発達障害が軽微なために診断名がつかない、即ち「黒とは認められない」人を示すようですが、なんとなく釈然としない「もやもや感」を覚えます。

というのも、発達障害の一つである自閉症スペクトラムを例に取れば、そこには診断の根拠となるバイオマーカー(生物的な検査所見)がないため、白黒の区別は極めて難しく、多くの場合、明度が徐々に変化するグレーの帯のどこかに集結するのではないか、と思うからです。

 

発達障害を含むさまざまな精神疾患の診断基準としては、アメリカ精神医学会が定期的に発刊している「精神疾患の診断と統計マニュアル(DSM)」があり、現在は第5版が2013年に出ていますが、例えばADHDの診断には、「本人の学校、家庭、地域等における行動の現在の特徴と、過去の経歴をできるだけ詳しく調べて、診断基準に照らし合わせること」と明記されています。

つまり、医師は患者の自己申告ならびに文献考察と臨床経験によって、診断基準への当てはめを裁量するのであって、特異な検査や心理検査は存在しないのです。

 

 

ここで話を「発達障害のグレーゾーン」に戻しますが、筆者のクライエントの中にも、仕事面でケアレスミスを繰り返し、期限を守れない、あるいは、こだわりが強くて、結果ルールを無視してしまう、集団の中で指示が通らない等々、「困った奴」のレッテルを貼られて悩んでいる人は少なくありません。

 

診断が下りないということは、福祉サービスや社会制度が使えないということですから、発達障害傾向があることを非公開(クローズ)で働きながら、息苦しさを感じることが多いと言います。

しかしながら、障害者の定義が「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」ということからすれば、グレーゾーンと称される発達障害者は、かつてなら人生の一部や正常な個性の一部だった注意や行動の問題を、いまや精神疾患と見られている、言い換えれば、発達障害者と接する人々、発達障害者を取り巻く環境の構築に関わる人々が障害を過剰診断し、正常と判断されるべき人も発達障害者と認定している、という可能性も大きいように思われます。

もし、その仮定が真実ならば、一番重要なことは、発達障害者に生じる困難を最小化するような制度設計を充実させることで、グレーゾーンを相当数減じることができるということです。

 

 

「発達障害のグレーゾーン」をいかに福祉に結びつけ、社会制度に載せるかという視点に加えて、グレーゾーンを増やしているかもしれない「社会的障壁」をどう取り払うか、という視点に立った取組みを進めることが多くの発達障害者の困難を軽減できる、という考えも重要な論点だと思います。

 

 

 

※ 今回のコラムは、書籍「これからの発達障害者「雇用」: 専門キャリアカウンセラーが教える」からこぼれた、貴重なお話となります。ぜひ、本編もお楽しみください!

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