発達障害者にサービス業、とりわけ接客業が適さないことは、よく言われることですが、それは、サービス業では、複数の顧客と臨機応変に対応しなければならないからです。
もともとマルチタスクが苦手であることに加えて、繁忙期に仕事が突然増える、とにかく様々な顧客が来店されるので、予定が立てづらく不測の事態が起きやすいなど、こだわりのポイント(「仕事の内容が決まっている」「仕事のペースが同じ」「仕事の邪魔をされにくい」)と正反対の仕事なので、キャリアカウンセラーの私としても一般にはお勧めしにくい職種です。
それでも、接客業を志向される方には、仕事の内容によっては、お勧めできる仕事もあります。
一つは、個別指導塾の塾講師です。
特にアスペルガーの方は、こだわりの強さから何らかの分野での専門知識を持っていることが多いので、個別指導や家庭教師のような一対一で教える仕事は向いていると思います。
もう一つはホステスです。
しかも出来るだけ「高級店」を選んだ方が良いと思います。
静かで落ち着いた雰囲気のお店で、トークでお客さんの人気を取る商売。大変だと思われるかもしれませんが、こうしたお店で求められるのは、話し上手よりは聞き上手です。笑顔で頷きながら相手の話を聞いて、褒めたり、肯定的なことを言って、さらに質問する。高度なテクニックは必要ありません。
意見は分かれそうですが、職種への抵抗感がなければ、高収入ですし、検討しても良いかもしれません。
静かな場所でノルマが少なく、一対一でじっくりと接客する仕事と言えば、私のようなカウンセラーやセラピストの仕事もありますし、お店ではないですが、図書館のスタッフも良いと思います。
最近、人材派遣のサイトで見たのですが、今は司書資格がなくとも、派遣で働きながら勉強して、司書資格を取る方法があるそうです。
また、どうしても、一般のイメージでいう接客業に拘るのなら、ビュッフェスタイルのレストランで働くという手もあります。座席へのご案内と会計を除けば、配膳・下膳はありませんし、会計ですら、単一価格ならばお釣りも簡単です。とは言っても、あまりカジュアルなお店ではなく、それなりに単価の高い「高級店」が良いと思います。
このように向いていないと言われる接客業でも、自分のこだわりを「気分の問題」で片づけることなく、「譲れないことの理由」を把握して、苦手の対策を立てチャレンジしてみる。
そういう意識を持って取り組んでいけば、いつしか「できる」と感じるようになります。
ちなみに、私は20代~30代にかけて、デパートで時計の販売・修理の仕事をしていました。
デパートのお客様は一筋縄ではいきませんが、腕時計の電池交換や部品の発注等、時計修理なら個室の中で作業する専門職なので、興味があって勉強する意思があれば、これも有りかなと思います。
※ 今回のコラムは、書籍「これからの発達障害者「雇用」: 専門キャリアカウンセラーが教える」からこぼれた、貴重なお話となります。ぜひ、本編もお楽しみください!
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