発達障がい者専門キャリアカウンセラーからのこぼれ話 Vol.16 「『最適』と『適正』」

私は身分で言えば公務員で障がい者の就労支援をしていて、その意味ではキャリアカウンセラーの仕事は副業になるわけですが、職場には内緒で正直な気持ちを言えば、発達障がい者専門のキャリアカウンセラーが本業といっていいと思います。

 

また、公務員の立場で行う就労支援は、福祉の現場でやる就労支援とは趣が異なり、企業に対する指導・啓発・相談対応が主になるので、キャリア支援者としての立場も、就労支援機関等が行う就労支援に敬意を払いつつも、企業の考え方を支持する傾向があります。

 

さらに言えば、発達障がい者キャリアカウンセラーは、一般のキャリアカウンセラーと違う面があります。

というのは、共感・傾聴で相談者の気持ちに寄り添い、ゴールへの道筋の道標として、相談者の意思決定を助けだけでは通用しないことが殆どだからです。

 

なぜなら、彼らの考え方が、「最適を選ぶ」というよりは、「適正を決める」ということだからです。

ところが、世の中には「適正」と思われても、実際には、多少問題はあるが「最適」ということが多く、この問題を「瑕疵(何らかの欠点や欠陥があるもの)」と捉えると、「適正」ではないから受け入れられないということになります。

 

しかしながら、発達障がい者のこの考え方を「矯正」するのは、私の経験では、ほぼ無理だと思った方がいい。

だったら、キャリアカウンセラーがやり方を変えるしかない。

自動車のナビのように、最短ルートはこれ、林道や峠があって運転に注意が必要だけれども景色が一番楽しめるルートはこれ、途中にパーキングエリアやサービスステーションがあって休憩しながら行くのならこれ、高速を使わず一般道で行くならこれ、みたいに複数の選択肢を示したうえで、キャリアカウンセラーのお勧めルートとお勧めの理由を言う。

 

そこまでやらないといけない。

 

この時点でとっくにキャリアカウンセラーの守備範囲は超えてしまうかもしれないが、いちいち「リファー(専門家に任せる)」していては前に進まないからです。

そのためには、労働面だけでなく、福祉のことや医療のことも必要最小限は勉強しておく。

当然、メンタルの問題もあるから、カウンセリング技法だけでなく、心理カウンセリングにも通じていなければならない。

 

発達障がい者専門のキャリアカウンセラーは、以上の通り、結構大変なのですが、それをするに足る喜びは、今の時代には珍しい彼らのピュアな心に触れ、一人ひとりが活躍できる到着地を知ることで、世の中が今までにない可能性に向かえることを確信できることがあります。

もしかすると、彼らがゴールに着くためには、行き方のルートを示しても、道を間違えてしまったり、エンスト等で途中止まってしまうこともあるかも知れず、再スタートしなければならないことになるかも知れない。

 

私は、そのことも含めて、専門キャリアカウンセラーの仕事の醍醐味だと思ってやっています。

 

 

※ 今回のコラムは、書籍「これからの発達障害者「雇用」: 専門キャリアカウンセラーが教える」からこぼれた、貴重なお話となります。ぜひ、本編もお楽しみください!

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